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★★★『路上のソリスト』

2010.06.01
音楽はどんなジャンルも聴くほうですが、純粋に音楽を味わいたいとき、クラシックに陶酔します。

映画の紹介で流れていた弦楽器の調べに惹かれ、『路上のソリスト(THE SOLOIST)』(2009年)を観てみました。

この映画は、ロサンゼルス・タイムズの記者スティーヴ・ロペスが、路上に暮らす天才音楽家ナサニエル・エアーズとの魂の交流を綴ったコラムを基にした人間ドラマです。

実話に基いた感動の友情物語という枠組みにとらわれない作品で、久しぶりに心揺さぶられる映画に出会えたような気がしました。

ナサニエル役のジェイミー・フォックスと、ロペス役のロバート・ダウニー・Jrの迫真の演技に圧倒されました。
統合失調症を抱えつつ、音楽をあきらめきれないナサニエルの苦悩や、精神を病んだナサニエルに戸惑いながらも、彼と向き合い続けるロペスの葛藤を、彼らはひとつひとつ丁寧に、繊細に演じきっているように感じました。

路上で生活するナサニエルと一晩ともに過ごしたロペスが綴った、
”私の知る彼は 朝日の中でヴァイオリンを弾く”
”天才少年と さまよえる旅人の間を漂っていた”
という一節がとても印象に残りました。

また、ディズニー・ホールでおこなわれたLAフィルのコンサートリハーサルに出向き、ベートーヴェンの交響曲を聴いたナサニエルの姿やその内面の描き出し方、それを見事に演じたジェイミー・フォックスには、今まで経験したことのないような衝撃と感動をおぼえました。

演奏が始まった瞬間、ナサニエルの瞳孔は開き、口を閉ざすことができないまま深く息を吸って胸が膨らみ、かすかに指が動き出します。
楽団の周りが暗闇に包まれ、演奏が浮き彫りになります。そして、ナサニエルはそっと目を閉じ、音楽の世界に身を委ねます。
そこには、ナサニエルと音楽のみが存在するのです。
そして、オーケストラの奏でるさまざまな音色が色とりどりの光のダンスとなってナサニエルの心に映し出されます。
まさに、共感覚(synesthesia)の世界です。
ナサニエルは、共感覚の持ち主なのでしょうか。それとも、脚色なのでしょうか。
とにかく、音に色を感じるこの不思議な感覚を見事に映像化し、ナサニエルの超越的な経験をきめ細かいしぐさや表情で演じているジェイミー・フォックスに脱帽しました。

オーケストラの演奏を聴いた後の二人のやりとりもとても印象的でした。
(ナサニエル):「ここにいる」
(ロペス):「誰が?」
(ナサニエル):「ベートーヴェン」
たったこれだけの短いセリフですが、途方もなく素晴らしい経験を共有したことが窺い知れます。

その後、ロペスは
「同じホールで 同じ音楽を聴いて音楽に魅入っている彼を感じると 高貴な何かが そこに存在する気になる」
と表現しています。
映画を通してナサニエルの音楽体験を観ているだけでも、たしかにナサニエルに音楽の神が舞い降りたような、音楽そのものをあらわしているような崇高な感覚をおぼえました。


映画の中で流れているベートーヴェンの調べも印象的です。
ジェイミー・フォックスが演じているナサニエルのヴァイオリンやチェロの演奏は、実際の本人ナサニエルの演奏なのでしょうか?
魂を音楽にゆだねて全身全霊で奏でられた、その透き通った音色に深く感銘を受けました。


リアリティに満ちた題材、映像、演技・・・そして美しい音楽、すべてが見事に調和した珠玉の作品だと思いました。



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