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/va/から/ba/へ

2010.06.20
今日は父の日。

Kathはいつもに増して
「おとうちゃん」
「おとうたん」
「おとん」
と夫に呼びかけていました。

1歳前後のころは、Kathは夫のことを
「パパ」
「パパパ」
と呼んでいました。

でも、今では完全に
「おとうちゃん」
です。
私たちの世代で「おとうちゃん」「おかあちゃん」と呼ばせている親は珍しいですが、Kathにとっては「パパ」や「ママ」よりも呼びやすいようですし、何よりかわいいので、そのまま「おとうちゃん」「おかあちゃん」と呼ばせています。

最近Kathは、「パパ」、すなわち/p/の音をあまり発しなくなりました。

でも、相変わらず
「ばばばばば」
と楽しそうに言っている姿は見かけます。

私が抱っこしてあげているとき、お互いの顔を見合わせていると、Kathがおもむろに
「ばばばばば」
と笑いながら言ってくるので、私もKathの真似をして
「ばばばばば」
と言うと、Kathはますます大笑いして、「ばばば・・・」を続けます。
きっと、Kathにとっては、この「ばばば・・・」も何かの意思をあらわす言葉なのだと思います。
たいてい、ごきげんなときに
「ばばばばば」
と歌うように発しています。

Kathが「ばばば・・」というようになったのは、生後8ヶ月前後からでした。

その頃から先月ごろまで、すなわち1歳2ヶ月(14ヶ月)齢までは、Kathは下唇に上の歯を当てて、英語の/va/の音を出していました。
むしろ、日本語にもある/ba/の音は、めったに発していませんでした。
すなわち、
「ばばばばば」
というのは、
「va va va va va」
だったのです。
ひとつひとつ、下唇に上の歯を当てて/v/の音をきれいに発していました。

しかし、1歳3ヶ月(15ヶ月)齢も後半に入った最近では、/v/の音ではなく、日本語の「ば」、すなわち/ba/の音になってきました。
「ばばばばば」と言っているKathの口元を注視しても、もはや下唇に上の歯を当てておらず、上下の唇同士を開閉して発する/ba/になっていました。

研究生活を離れ、最近の言語発達研究の動向にはついていけていないのですが、このようなKathの様子を観察していて、過去に愛読していた言語習得の文献(桐谷滋著、『ことばの獲得』、ミネルヴァ書房、1999年)を読み返してみたくなりました。

乳児の音韻知覚(音の聞き分け)の発達に関しては、次のようなことがわかっています。

乳児期早期には世界中の言語に存在するほぼすべての音韻を弁別する能力を有しているといわれています。
このような能力のことを、「言語普遍的な音韻知覚能力」といいます。
この「言語普遍的な音韻知覚能力」は新生児期から示されることから、動物に対してヒトは、出生時においてすでに、音声の音韻性特徴をカテゴリ的に知覚する聴覚メカニズムを備えていると考えられています。

音韻知覚の弁別能力、すなわち音の聞き分けに関しては、母音知覚に関しては生後6ヶ月前後(Polka et al.,1994)、子音知覚に関しては生後10ヶ月前後(Werker, 1984)に、母語(母国語)には存在しない非母語の音韻対立の弁別能力が低下すると報告されています。

このような非母語の音韻に対する弁別能力の低下は、母語の音韻体系への同化能力の発達を意味し、音声処理がより母語に適合し、母語をより効率的に習得するために必要な発達変化である、と捉えられています。

また、乳児期の母語音韻体系への同化能力の発達と、他の非言語的な認知的能力(視覚的カテゴリ化能力、記憶)との相関も認められています(Lalonde & Werker, 1995)。

つまり、見たものを切り分けてグループにまとめる能力や、見たり聞いたりというような五感で感じたことを記憶しておく能力と、音声をことばとして処理する能力とは、深く関連していることが示唆されています。

以上のように、音韻知覚、すなわち言語音の聞き分けに関することは確かめられたのですが、音韻生成、すなわち言語音を発するほうの研究報告に関しては掴みきれませんでした。

私がいま深く関心を抱いているのは、音韻生成の発達に関してです。

一般的に、音韻知覚、言語認知の発達が先行し、その後に音韻生成、言語表出の発達がやってくるので、上記のような音韻知覚の発達が完了しているからこそ、Kathは母語の子音を表出するようになったと考えられます。

ちなみに、音韻知覚能力の発達について上記の研究をふまえると、あたかも生後10ヶ月が外国語習得の臨界期であるかのような触れ込みが早期英語教育教材などで見かけられますが、実際に子育てをしながら我が子の言語発達を観察してみて、こうした意見には疑問を感じずにはいられません。

『ことばの獲得』にも記述されていますが、生後10ヶ月のころから、「乳児は自分を取り巻く音声環境を、母語の音韻体系の枠組みのなかに整理することによって、これらの組み合わせからなる語構造を抽出し、記憶し、意味と結びつけて、語彙獲得へと進んでいく」という意味で、生後10ヶ月は音韻知覚能力の発達において重要な時期である、ということがいえる、ということにとどまると思います。

私自身、外国語習得が趣味のひとつなので、Kathにもいろんな言語を聞かせていますが、強制的な教育はしていません。
この時期は、むしろ、子どもの周りにいる大人から母国語またはその土地の方言を聞かせ、身につけさせていくことが大事だと思っています。

Kathの/va/から/ba/への子音表出の変化が興味深かったので、つい、夜更かししてのめり込んでしまいました。

これからも、Kathとのおしゃべりを楽しみながら、Kathのことばの発達をあたたかく見守っていきたいと思います。


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